太陽光発電のソーシャルコモンズ ~売電型から自家消費型への潮目~

photovoltaic power generation

(2017.8.4初出)

バブルと呼ばれた頃

7月*2017年の-の初旬も終りかけた9日日曜日*普通に「しちがつここのかにちようび」とするのが音的にキレイだし、伝えたい情報もそれだけ(日付だけ)でしたが、ひと月前の事柄を引き合いに出すのにいきなり日付の読み上げから始めても読者が付いて来れないと思い、こうしました。…その判断と書き方が果たして正解だったかは、今見ても確信が持てません-。TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で気象予報士が話した今年の関東の長期気温予報に、耳を疑った人は、*冒頭の一文が注釈の通り間延びしたので、ここ(赤字読点)まで読点を遅らせると読者の息がキツイだろうと思い、当時は「予報に」で一度切りました。意味的には今回直したようにここで読点が正解-多かったに違いない。*今の感覚に即し、ここで改行-

予報士いわく、「今年、関東は9月いっぱい、最高気温が30℃を下回る日は1日もないかもしれない」。――照り付ける太陽を見上げて「せめてこの力をエネルギーにも使えれば!」と嘆く声は今夏の関東圏居住者に始まるものではない。*人の発言というものは強いもので、カギカッコで表記すると、それを受けた書き手の論旨を並列で同格に並べて対照させることができます(連歌における上句と下句の響き合いみたいな効果が生まれる)。その並べ方もやや唐突なぐらいがちょうど良いという考えは当時と同じですが、今見ると、何もないのは流石に意図が伝わらなさそうなので、目くばせというか、書記のうえでのお約束的な意味あいで横線を追加です-1990年代半ばに地球温暖化防止条約が発効して以来からというもの、太陽光発電は世界共通のテーマである。

特に、京都議定書が発効した2005年以降は特に、再生可能エネルギーの早期普及が各国とも喫緊の課題になった。日本は2004年にまとめた太陽光発電の開発・普及のためのロードマップ「PV2030」を予定より前倒しで改訂し、2009年に「PV2030+」として発表。太陽光発電の発展が「2030 年までに主要なエネルギー技術の1つに認知される」状況から「2050 年までには1次エネルギー需要の5~10%を賄う」状況に進むという想定で、太陽光発電の余剰電力に対する*正確を期す意味で、この一節を省略しないことにはこだわりました-固定価格買取制度(FIT)を同年11月にスタートさせた。*今の感覚に即して改行追加-

太陽光発電電力の売買そのものは以前から行われていたが、それまでは火力発電などの通常電力と同じ1kWh(キロワット・アワー)あたり24円で買われていたものが、この制度によっていきなり倍の48円で、しかも10年間固定価格保証で、買ってもらえるようになったとあって各方面から参入が相次ぎ、「太陽光バブル」と呼ばれる様相を呈したものだった*文章的には歯切れが悪くなりますが、当該ジャンル専門の書き手ではないですし、実地で取材したのでもない以上、ここはこうしないと。むしろこうなるのが本当だと思います-。

「売電」から「蓄電」へ

あれから8年が経ち、太陽光発電が新しい局面を迎えている。*改訂。改行-

一つには、固定の買取価格が定期的に減額されることの影響だ。東京管内を例にとれば、2017年度導入分は発電量1kWhあたり28円、2018年度は26円、2019年度が24円(いずれも出力10kW未満の住宅用)。この24円という額はつまり、開始から10年を経て、制度によってゲタを履かせられる前の額に戻ることを意味する。制度そのものも住宅用に関しては2019年10月末をもって終了が予定されている。投資=売電メインの太陽光発電の普及はそこまで、というわけだ。

代わって出てくるのが「蓄電」。つまり、発電した電力を売らずに溜めておいて自分で使うスタイルへの移行だ。「溜める」という要素がこれまで相対的に弱かったのは、発電設備だけでも非常に高価だったことが一番の理由だが、普及に伴い製造コストが下がり続けた結果、今やシステム導入の費用は10年前の3分の1程度と言われる。しかも、技術が進んで発電性能が向上したことで、現在では、売らずに溜めておけば世帯消費分はまかなえるほどの発電能力(発電量)が基本的には確保できるようになった。※設置環境による。

そこで蓄電池が注目されるわけだが、家庭用の太陽光発電システムで蓄電池も備えたものは、まだほとんど普及していないのが現状だ。理由はまたしても非常に高価であることだが、昨年末、アメリカのテスラが❝長寿命・大容量・省スペース❞の家庭用蓄電池システム「Powerwall(パワーウォール)」を発売すると発表。価格は業界平均のほぼ3分の1という安さだった。工事費を入れても二桁万円で蓄電池システムが導入できるようになるとあって、多くの人が、「太陽光発電普及の潮目が変わる」と印象づけられたはずだ。

「コミュニティ」への着地と経営者感覚

「発電」から普及促進のための「売電」へ、そして「蓄電」へ――。これらの動きはマクロ政策の文脈からは「分散型電源確立に向けたプロセス」と言えるだろうが、このコラムでは、より実践者の感覚に沿った言い方で、「売電型から自家消費型への移行」ととらえてみたい。*今の感覚で改行-

本稿を書くにあたり、家庭用の太陽光発電を実践されている方々をリサーチしていると、筆者のように発電当事者でも業界内の人間でもない者の目には、むしろ、官製バブルから解放されて投資から自家消費へ潮目が変わるこれからのほうが、太陽光発電が再生可能エネルギーの一つとしての本来の在り方に戻っていけるように感じるからだ。当の太陽はきっと、「やれやれ、やっと落ち着いた。人間ども、これからしっかりやれよ」と言いたいに違いない。*今見ると明らかにスベっていますね(笑)。トルツメ-

リサーチを続けていると、実践者たちの声とは別に、システムを販売する側やアナリストたちが今後の太陽光発電を分析する声も聞こえてくる。が、*今もそうですが執筆当時は特に、後に続ける文章との関係が順接なのにもかかわらず「~が、」「~ですが、」の逆接で繋げる言い方が大嫌いで、意地でもそうするもんかと思って当時は切りました。――ただ、今は濫用さえしなければそんなに敵視すべき語法でもないと感じています(なので、ここで使うのは濫用ではないので今回直しました)。ただし、自分がそう感じるようになったからといって世間から濫用が減ったわけではなし。言葉に対するこのへんの美意識は忘れずにいようと思います-その誰もが普及のカギとして語るのは、「初期投資額が短期間で回収できること、確実に回収できること」だ。しかしただ、それらは、当の実践者たちの感覚とは微妙にずれている気がして仕方がない。むしろ文明評論家のジェレミー・リフキンによる次の一節*これも執筆当時たまたまその本を読んでいて見つけました。京王井の頭線西永福駅徒歩20分の和田堀公園プールはチケット一枚で2時間入場でき、泳ぎの合間に、陽がギンギンに照るプールサイドのスタンドで仰向けになり、顔にかかる日差しをちょうど見開きぶんの本の陰で避けて読んだのを思い出します-のほうが、当人たちも意識していないレベルの本音を言い当てているのではないか。

「前者(筆者注:資本主義市場)が財産権や買い手の危険負担、自主性の追求を促す一方、後者(同注:ソーシャルコモンズ)はオープンソースのイノベーションや透明性、コミュニティの追求を奨励する。」(NHK出版刊『限界費用ゼロ社会』p36)

引用の「財産権」は「売電目的の投資」に、「買い手の危険負担」は「初期投資が回収できること」に、それぞれなぞらえられるだろう。*改訂。改行-

しかし、筆者が感じた太陽光発電の当人たちの実践は、むしろ後者の要素に重なる。つまり「オープンソースのイノベーションや透明性」は「世帯ごとに違うシステム構成と発電環境について情報交換し、助けあうこと」であり、「コミュニティの追求」は「クリーンエネルギーの仲間を増やし、互いに運用を競いあう楽しさ」になぞらえられるのではないかということだ。

さらに「コミュニティ」には物理空間としてのコミュニティ=「地域」という意味も重なる。政府が「災害に強い地域社会づくり」の文脈で「コミュニティ」を語る時の意味がそれだ。パナソニック製品関連の記事では、昨年4月の熊本地震の際、停電した地域で同社の蓄電システムを導入していた家庭がプチ避難所のようになり、近隣にお湯を分けるなどしながら通常の生活を送った例も報告されている。

実践者の様子を追っていると、初期投資を額面上回収したかどうかも確かに意識はするが、それはいわば経理の部分であって、それよりも、本当は「エネルギーを自給自足することによる自己信頼感」や、「売電を通じて味わう経営者感覚」を楽しんでいるように思えてくる。*改訂。改行-

例えるなら、10年スパンで支出する何百万円のうち5万円の回収見通しを懸念して判断を変えるのは経理事務の感覚であり、経営者の感覚とは自ずから違うものだ。そもそも買い物とは、「それが良さそうで、欲しくて、今買う余裕があるのなら買ってみる」という行為のことであるはずだ。煽るわけではないが、状況が許せば真っ先に太陽光発電を始めてみたい気がするのは、筆者だけだろうか。

 

 

テーマについてより深く知りたい方のために、執筆当時参照した&掲載後に見つけた資料等の一覧を格納しておきます(今も生きているもののみ)。参考にされてください

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